院長のブログ
人間のポテンシャルを引き出す「マラソン」
「30km走やフルマラソンを重ねることで普段眠っている体の機能が引き出される」
30km走によって目覚める眠っていた身体機能があるそうです。20km走では届かない生理学的変化についてのお話。
ランニングトレーニングの中でも、特にマラソンを目指すランナーにとって「30km走」は特別な意味を持ちます。単なる距離練習ではなく、普段のトレーニングでは動かない身体の深層機能を引き出すスイッチの役割を担っています。実際、運動生理学的にも20km走と30km走では、体内で起きている反応が明確に異なるそうです。
① エネルギー代謝の転換点「糖から脂質へ」
人間のエネルギー供給は、まず筋グリコーゲン(糖)に依存しています。
しかし、運動時間が2時間を超える、すなわち約30kmに達する頃、グリコーゲンが枯渇し始め、体は強制的に脂肪酸代謝(β酸化)へ切り替わります。ある文献では、2時間以上の運動後に筋内の糖が急減し、脂肪酸酸化が急増することが報告されています。運動時間が90分、約20km走では糖代謝が中心になるが、150分、約30km走以降では脂質代謝が優位になるようです。
つまり、30kmは代謝スイッチが入る臨界点であり、20kmではまだ糖中心の走りに留まるという事。
この脂質代謝の活性化は、ミトコンドリア酵素(CPT-1、HADHなど)の発現を促し、持久力の根幹となるエネルギー変換効率を高めます。
② ミトコンドリアと筋線維の再構築
30km走のような長時間持続運動を繰り返すことで、筋線維の代謝特性自体が変化します。
長時間運動を継続することで骨格筋内のミトコンドリア密度が最大2倍に増加するという報告があります。これは、20km程度の短時間運動では見られなかった変化です。また、短時間高強度トレーニングでもある程度の代謝改善は得られるが、長時間・低強度運動の方が酸化系酵素の発現が顕著であるそうです。
つまり30km走を複数回行うことで、筋線維そのものが脂肪を燃やす仕様に再設計されるというわけです。
③ 自律神経・ホルモン系の適応
長時間走ではエネルギー消費だけでなく、自律神経やホルモン分泌系にも深い影響が及びます。2時間以上の持続走トレーニングを行うことで、安静時の副交感神経活動(心拍変動:HRV)の上昇とコルチゾール反応の安定化が起きます。これは、自律神経のバランス能力が高まった結果と解釈できます。長時間の有酸素運動を繰り返すことで、アドレナリンやノルアドレナリンへの反応が緩やかになり、ストレス耐性が向上するという研究報告があります。
つまり30km走を重ねることで、長時間のストレスに強い体、すなわち自律神経の持久力が養われます。
④ 精神的持久力と脳内物質の変化
20km走までは「体の疲労」による苦しさが中心ですが、30kmを超えると「心の壁」が現れます。
このとき脳では、エンドルフィン・セロトニン・ドーパミンといった神経伝達物質が急増し、精神的高揚や集中状態、いわゆる「ランナーズハイ」が生まれます。長時間の運動によって前頭葉の活動が抑制され、運動制御中枢が活性化することで「時間感覚や苦痛感覚が鈍る」という研究報告があります。
さらにある研究者はPET解析により、マラソン後に内因性オピオイド放出が脳内で増加することを直接確認しました。これらの変化は20km走ではほとんど起こらず、30km以上の長距離走特有の脳内適応となります。
⑤ 30km走がもたらす総合的リプログラミング
このように、30km走を重ねることで体内では、
◻︎糖から脂肪への代謝転換
◻︎ミトコンドリアの増殖
◻︎自律神経の安定
◻︎脳内物質の再構築
といった多層的な適応が起こります。これは単なる持久力の強化ではなく、身体システム全体の再プログラミングといえるでしょう。20km走は基礎的なスタミナ向上には有効ですが、30km走で初めて「壁」を超え代謝・神経・精神のすべてが再構築されます。まさに30km走は「限界突破のための科学的トレーニング」であり、これを繰り返すことでマラソン仕様の身体が完成ことになります。
代謝・神経・筋・脳の4つが連動して進化し、普段は眠っている機能が目覚めてきます。それは単なるスタミナではなく、人間の生理的ポテンシャルを最大限に引き出すトレーニングなのです。
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