

院長のブログ
肩鎖関節痛について
肩鎖関節(けんさかんせつ)は、肩甲骨の肩峰と鎖骨がつながる関節で、肩の動きを支える重要な部分です。
この関節は転倒やスポーツ中の衝突で負傷しやすく、症状によっては長引くこともあります。
今回は、肩鎖関節の怪我について解説します。
肩鎖関節には鎖骨と肩甲骨を安定させるための3つの靭帯があります。
1. 肩鎖靭帯(けんさじんたい / Acromioclavicular Ligament)
鎖骨の外側端と肩甲骨の肩峰をつなぐ靭帯です。肩鎖関節を直接支え、関節の安定性を保ちます。
損傷すると関節のぐらつきや軽い痛みが出現します。 肩鎖関節捻挫(I度~II度)
2. 烏口鎖骨靭帯(うこうさこつじんたい / Coracoclavicular Ligament)
肩甲骨の烏口突起と鎖骨をつなぐ靭帯です。烏口鎖骨靱帯は2つの靭帯で構成されています。
鎖骨の動きを制御し肩鎖関節の安定性を高めます。強度が高く肩鎖靭帯よりも重要な役割を果たしています。
損傷すると、鎖骨が浮き上がるピアノキーサインが出現します。(Ⅲ度以上)
2-1. 菱形靭帯(りょうけいじんたい / Trapezoid Ligament)
前方に位置し、横方向の安定性を保ちます。
2-2. 円錐靭帯(えんすいじんたい / Conoid Ligament)
後方に位置し、上下方向の安定性を保ちます。
3. 烏口肩峰靭帯(うこうけんぽうじんたい / Coracoacromial Ligament)
肩甲骨の烏口突起と肩峰をつなぐ靱帯です。肩鎖関節の安定性には直接関与しないが肩の構造を補強しています。
腱板を保護し、インピンジメント症候群(肩の衝突障害)を防ぐ役目をしています。
肩鎖関節のケガはⅠからⅥに分類されます。
Rockwood分類
typeⅠ(捻挫):肩鎖靱帯損傷・部分断裂でX線上の関節不安定性は認めない。
typeⅡ(亜脱臼):肩鎖靱帯の断裂と烏口鎖骨靱帯の損傷・部分断裂が起こり、肩鎖関節の開大・水平方向の不安定性はあるが上方への転位はわずか。
typeⅢ(上方脱臼):肩鎖靱帯の断裂と烏口鎖骨靱帯の完全断裂を起こし、垂直・水平方向の不安定性を来す。烏口鎖骨間距離は健側と比較して25-100%となる。
typeⅣ(後方脱臼):肩鎖・烏口鎖骨靱帯の完全断裂で鎖骨遠位端が後方に脱臼している。
typeⅤ(明らかな上方脱臼):typeⅢと同様の上方への脱臼だが、より重症で、烏口鎖骨間距離は健側と比較して100-300%となる。
typeⅥ(下方脱臼):下方脱臼を起こし鎖骨遠位端が肩峰か烏口突起の下に転位する。
肩鎖関節の怪我は、主に以下の3パターンが多いです。
①肩鎖関節捻挫(軽度の怪我)
原因:転倒やスポーツ時の衝撃
症状:腫れや痛み、肩の可動域の制限
治療:アイシング、安静、鎮痛剤の使用。数週間で回復します。
②肩鎖関節脱臼(重度の怪我)
原因:肩を強く打つ、バイク・自転車事故など
症状:鎖骨が飛び出すように見える、強い痛み、腕が動かせない
治療:
• 軽度(Ⅰ~Ⅲ度):三角巾や装具で固定し、リハビリを行う
• 重度(Ⅳ~VI度):手術で鎖骨を固定する
③肩鎖関節症(慢性的な痛み)
原因:加齢や長年の負担、過去の怪我
症状:鈍い痛み、可動域の制限
治療:ストレッチ、鎮痛剤、関節内注射、手術(重症時)
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